2014年12月23日火曜日

Yさんのこと(後編)

「Yさんが自殺したよ」

いつも淡々と話すその人は、その時も淡々と言った。

「亡くなったの?」

「ああ」

例えば地球に巨大隕石が衝突し、7人だけが生き残るとしたら、Yさんはその7人に必ず入るタイプだと思っていた。仮に何かの間違いで自殺したとしても、途中で木に引っかかったりして、生き延びるタイプだと、何の疑いもなく信じていた。

彼の自殺を教えてくれた人は、予測される原因を少しだけ話した。それにしたって。

いつもテキトーなことばっかり。そんな彼が、真顔で話をしたことを2回覚えている。1回はあたしの数字が上がっていなかったとき、調子はどう?と誰かに訊かれ、グッと詰まったとき。珍しく真剣な表情で言った。

「そういうときは、間に受けなくていいんだよ。ぼちぼちって言っときゃいいんだ」

もう1回は、何かの拍子に彼が「お前は客に信頼されてるな」と、ふっとつぶやくように言ったこと。

人間はわからない。本当の気持ちもわからない。彼が飛び降りたという、ターミナル駅のデパートの屋上は、埼京線のホームに立つと見える。

その建物を見上げたり、その景色を思い出しながら、こうやって書いていても涙が出るのはなぜだろう。

今でもどこかで大風呂敷を広げて、ニヤッと笑ったり、妙に生真面目な顔をしながら、いい加減なコトを並べて、トーク炸裂してる彼がいるような気がする。いてくれればいいのに、って思う。

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