2016年10月14日金曜日

映画 エル・クラン

1980年代前半のアルゼンチン。独裁政権が崩壊し、平和が訪れたかに見えるが、混沌とした時代、金持ちセレブを狙った誘拐が多発。誰が? 何のために? 実話に基づく、驚愕の物語がいま幕を開ける!

「犯人」は、プッチオ一家。父、母、3人の息子、2人の娘、ごく普通の大家族。しかしフォークランド紛争の「結果」により政府が転覆してしまい、情報管理官だった大黒柱の父が失業したことをキッカケに、誘拐ビジネスに手を染めてしまったのだ。

長男はラグビーのスター選手。よりによって息子のチームメイトの友人を誘拐し、なんと!自宅に監禁。妻が作った食事を持って、淡々とした表情で階段を上っていく父。2階には、特別に作られた「監禁部屋」が存在していたのであった。

50万米ドルの身代金を手に入れたにも関わらず、父は息子の友人である人質を殺害してしまう。

「なぜ、殺したんだ」

「お前の関与を疑って、警察に訴えようとしたからだ」

鋭い眼つきでキッパリ答える父。

そして次の誘拐の実行には、長男も加担することになる。しかし、彼に恋人ができ、誘拐ビジネスから離れようとしたことで軋轢が生まれ、事態は思わぬ方向へ。そして衝撃のラストシーンが待っていた!

シネマカリテ、がんばってます(^^)v
ロビーには、作品に因んだ手作りグッズがたくさん展示されている。ポップもかわいく、映画への愛が感じられるんだにゃ。「新宿駅隣り」絶好のロケーションで奮闘するミニ・シアター。応援してます。



いつもなら、ここまでなんだけど、あまりにも衝撃的なラストだったので、ネタバレを書くことにした。観ようと思った人は、下までスクロールせず、新宿シネマカリテへ!10/21(金)まで絶讃上映中です。順次全国公開中!
そうそう、製作はあの!ペドロ・アルモドバル監督。彼のテイスト、満開だ。

ま、観ていて楽しい映画ではないけれど、こういう映画が製作され、日本でもしっかり公開される自由と多様性が存在するってことは、とても大切なこと。大作ばかりがもてはやされる昨今だけど、一人でも多くの人に、ミニ・シアターに行く生活習慣ができるといいにゃと思う今日この頃。

家のテレビでこういう映画を観てるとき、ミッケがニャ~とか鳴いたら、台無しだし、映画に入りこめるのは、やっぱり映画館(^^)


以下、スクロールするとネタバレ。






























4人めの人質は、年配の女性(もちろん金持ち)。しかし彼女の家族は身代金の支払いを渋り、監禁生活は長引く。人質も犯人も疲弊していくが、政情も変化していた。

ある晩、警察がプッチオ一家に強行突入。人質を救出し、一家全員がいったん逮捕されるが、父と長男、次男以外は釈放。

「あなたが有罪を認めれば、息子さん達は無罪放免となるだろう」

罪を認めることを勧める弁護士に、父は無表情で言い放つ。

「私は無罪だ」

父は姑息な手段を使って、生き延びようとし、絶望した長男は自殺を図るが、失敗。

ラストシーン。真っ黒なスクリーンに、その後の家族の運命が語られる。

長男は獄中でも何度となく自殺を試みるが、果たされず、若くして病死。

次男は釈放後、ブラジルやカリブ海を放浪していたようだが、インタビューは実現せず。

美術教師だった長女も、若くして病死。

次女は親戚に引き取られたが、後には母と暮らす。

母は存命だが、取材には応じず。

そして父は、刑務所で弁護士の資格を取り、釈放。出所後、若い女性と再婚...。

眼つきは鋭過ぎるが、末娘の宿題を手伝うような、心優しい父。もとはといえば、家族思いだったからこそ、失業後、家族のために「ビジネス」を始めたんだろう。

だからなのか、父は、本気で自分は無罪だと思っていたよう。

でも、自分の息子に罪をなすりつけるような言動には、思わず背筋がゾクゾク。息子の将来を奪ってまで、自分だけ生き延びようとするなんて。

なんて、キレイゴトかもしれないな。人間って、複雑だから。

ただ、息子、特に長男との間には、一緒に「ビジネス」をしていたときから、奥底に確執が潜んでいたような気もする。

当時のアルゼンチンの政情も複雑極まりなくて、アルゼンチン人に訊いても、話したがらなかった。プライドが高いアルゼンチン人にとって、葬ってしまいたい、暗黒の時代なのかもしれない。

ひとつ言えるのは、1970年代後半から1980年代にかけての軍事独裁政権下で、多数の「行方不明者」が出たということ。数もはっきりせず(ウィキペディアによると、9,000~30,000人)、どこに行ったのかもわからない。反体制派を中心に、多くの人々が消えてしまったのだ。

このあたりのことは、映画「オフィシャル・ストーリー」「タンゴ ガルデルの亡命」で描かれてます。

本作品「エル・クラン」のパブロ・トラペロ監督は、1971年生まれだそう。自分の国の黒い歴史を残しておかなければ!といった使命感に突き動かされて、この映画を作ったのかも...なんてことを、ふと思ったりした。

すごい映画だったな。館内が明るくなっても、立ち上がれないくらいに。



以上です。














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